前回に続き、 熊本のでの研修の模様をお届けいたします。
年に2回、農家さんのところへお邪魔しているのですが、夏は刈り取りに、秋は苗の準備をお手伝いに行ってます。
今年は10月に行ってきました!

今回の作業は『い草』の苗付けの前にあたる作業のお手つだいです。
田んぼで育った『い草』の株を掘り出して、株を分割し320個の穴の開いたパレットに刺していきます。
パレットに入れられた苗はまた田んぼに戻ります。
根っこが育ってきたら、パレットごと別の田んぼにお引越しします。
そう、意外と『い草』達は田んぼを引っ越ししまくってます。
僕は勝手に始め植えたところから刈り取りまでずーっと定住してるもんだと思ってましたが、違うんですね~。
お手伝いしてきたのは一番人手がいる作業『苗割』のところですね。

株の中には何本もの『い草』がいるのですが、これをバラバラにしてこれから育つ赤ちゃんの芽をみつけること重要ポイントになるのです。
赤ちゃんの芽と元気な若い『い草』セットになるまでひたすら分割してきます!



この見極めが実に難しいんですよ・・・
赤ちゃん芽を見つけても上手く成長してなくてダメな子がいたり。
木化(もっか)呼ばれる現象で、根っこが少し硬くなったり。
とにかく元気な子を見つけ出さなくてはいけません。
もうなんか、スクランブル交差点で芸能人の卵をスカウトするかのような難しさに僕は感じてしまいましたね。。。
いや、やったことはないですけどね。

この作業に近道はありません、地道に根気強く確認し選別していくことが大事なんです。
作業に集中するあまり、だんだん無口になっていきます。
意識はひたすら苗に・・・
そうすると一つの疑問が湧いてきます。
「・・・君は元気なのか?」
そう、自分の判断に自信が持てなくなってくるのです。
そりゃそうです、相手は植物、機械やPCを相手にしてるんじゃないんです。
白黒の間に無限のグラデーションがあるんですよ。
頭ではわかっていても決断が難しいんです。
上手く育てば収穫につながる、うまく育たなければ収穫が減る。
ここを見極めなければいけないという実に重要な工程なんです!
不安になってきたので先輩に聞いてみます。

・・・ちょっと嫌そうですね。
さ、さて、苗を割った今度はパレットに刺していきます。

ここに分割した苗を刺していくんですね~。
刺して刺して、刺しまくっていきます。
その数320個!!
的確に、かつスピーディーに集中する作業が続きます。



みんなで刺しまくったパレットこういう状況になってきます。

あとはこれを田んぼに敷いていきます。
のですが、田んぼは歩いて大丈夫なところが決まっていて、そこまでは用水路の縁を歩いたり、田んぼに入ったら入ったらでずぶずぶと足を取られます。
そう、意外とバランス感覚を問われてきます・・・
僕、ちょっと苦手で、昔から体感がないというか、現地で誰にも言ってないですが、めっちゃ怖がってます・・・



倒れたら大変ですよ、全身泥んこ・・・
なんとかバランスを保ち、大惨事は免れました!!
各々が分割し、パレットに刺した苗たちは農家の吉田さんが見守ってくれます。
名前入りの札が立っているので、一発でばれてしまいます!!




・・・ん??



お尻ぬれちゃいました・・・
最後の最後でやらかしたー!!
ま、まぁ最小限の被害ということで・・・
以上が、お手伝いした作業の内容です。根気のいる作業の連続で何より人手がいるんです。
そしてなんと、今年から通わせていただいている吉田さんの畳表を取り扱わせてい頂けることになりました!!
吉田さんは農家さんで初じめて『特別栽培農産物』に認定された畳表です。
農水省の厳しいガイドラインをクリアしないと認定はされません。
また、数少ない特産物マイスターの称号も持ち、表の品評会ではの農林水産大臣賞も受賞されています。
有機物で『い草』を育て極力農薬を使わないので、表になったのちの残留農薬もゼロになっています。
農薬が少ないということはその分雑草が生え、管理に手間がかかってきます。
徹底的にこだわり、安全な畳表を日々研究し追及されています。
去年行った時に仰っていましたが、
「どんなに綺麗な表でも、自然のものだから添加するのは間違っている。肌に触れるものだから安全なものじゃないといけない。」
僕はそれを聞いて、「凄いとこに来てしまった。」と改めて思いました。
30歳を過ぎて家業を継ぎ、どうせなら素材を作る産地に行きたいと思い、先輩に頼み込んで行った熊本。
正直、自分の決意の甘さに恥ずかしくなりました。
苗から育て畳表になるまでに2年の歳月を費やし、自然を、天候を読みながら「い草」を育て過酷な作業に取り組んでいく。
畳屋の何倍も何千倍も何万倍も農家さんは頑張っているのです。
『い草』農家さんはそれを自分が生まれる遥か前から繰り返してきたんです。
そこには脈々と続く先人の歴史があり、それを紡いで継承しさらに創意工夫していく後継者がいる。まぎれもない文化があり、実は自分もまたその中にいたんですから。
畳屋としてではなく、畳業界、延いては和文化、日本文化の中にいたんですから。
その事に気づくことすら出来なかったのですから、恥ずかしくもなります。
吉田さんのひたむきさを目の当たりにすると、ついついそんな事を考えてしまいます。
新しくラインナップに加わった安心、安全な吉田さんの畳表、五代目が自信をもってお勧めいたします!!
ぜひご相談くださいませ!

